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【U,C,0089 Mar~U,C,0090 Feb】Episode F2 「歪むセカイ」 [A Piece of U.C.00XX]

「右舷ノズル、三番まで沈黙。第一エンジン緊急停止します!」
「右副砲座被弾! 損害状況確認しろ!」
 カタニアのブリッジは再び半狂乱状態だった。ブガディー中佐も胃がキリキリと痛み出すのがわかった。暗礁宙域の縁に沿って、ネオ・ジオンのエンドラ級巡洋艦が急接近してきたのが十分程前。まずは艦砲戦と思われたのもつかの間、盾にしていたはずの岩塊やデブリの陰から出現したネオ・ジオンMSの攻撃を受けているのである。周囲索敵の甘さが原因だ。すでにカタニア搭載のMSの半数以上は、エンドラ級巡洋艦急接近に際して、緊急発進して迎撃に向かったところで、カタニアを防衛するのは、バーセス中尉の隊、三機のみだった。
「バルクーナ中尉、カタニアが敵MSの攻撃を受けています。連中の狙いはカタニアです。援護に向かわなければ!」
 光学観測でカタニアがいる辺りに戦闘の光が確認されたことで、カタニアが攻撃を受けているのがわかった。ミノフスキー粒子のごく薄い宙域を通って、バーセス隊が迎撃に入っている無線も、途切れ途切れで確認できた。
「いつの間に包囲していたんだ。しかし・・・、エンドラの攻撃をカタニアに当てるわけにもいかん。アルベロー少尉の隊は現地点前後五kmでエンドラを迎撃、私とハルナはカタニアの援護にまわる。」
 バルクーナ中尉は、コットス隊の生き残りであるハイワーズ曹長をバーセス中尉の隊に持っていかれたことに、今更ながらホッとしていた。もし自分の隊に編入していたら・・・、と考えると少々ゾッとする。
 二機の89バーザムは、アルベロー少尉のマラサイにハンドサインを送ると、機体を翻して、元来た方へと加速した。

「敵MS二機反転、残り四機は現座標で停止。」
「よし。ハイドラ周囲で待機中のガザD部隊、ハイドラ目の前のMSに十字砲火開始! ハイドラも十秒間、砲撃。当てなくてもいい。」
 ワンズ中佐は再度攻撃指示を出す。アルベロー隊を取り囲むように息を潜めていたガザD六機は、ナックル・バスターの砲撃を開始した。ハイドラのビームに気をとられていたアルベロー少尉は、思いもよらぬ近距離からの砲撃に慌てて回避行動に入る。グルスホフ准尉、ヤムチャヌ曹長、フジマイ軍曹のハイザックも、機体をひねりながらロックオンを回避しようと必死だ。
「戻るな! 突破してエンドラに取り付け! エンドラを盾にすれば、狙撃されにくくなる!」
 アルベロー少尉は後ろに下がろうとするヤムチャヌ曹長に怒鳴った。フジマイ軍曹はシールドを吹き飛ばされながらも、火線を潜り抜け前進を試みる。
「ほう、活きのいいのがいるようだ。敵艦との距離は?」
「四千五百です!」
「よし、輸送艦を本艦右舷後方へ。ガザD部隊陣形変更、敵MSを取り付かせるな! 一気に最大戦速へ移行する。だが、輸送艦は置いていくなよ。」
 ワンズ中佐は、ここまでは予定通りと、傍らのシートに埋もれているベルケ大尉を見た。ベルケ大尉はワンズ中佐の視線を感じ頷く。
 エンドラ級巡洋艦に向かっていったはずが、急加速されてすり抜けていってしまったことに、アルベロー少尉達は面食らった。自分達を取り囲んでいたガザDは、今度は面陣形を取って母艦を守るように後退していく。見事な連携だった。
「エンドラが加速していきます。と、もう一隻輸送艦も!」
 すでに相当の速度で接近してきていたエンドラ級巡洋艦は、ガザDを回収していくと、更に加速をかけていく。静止状態からのMS程度の加速では、到底追いつける速度ではなかった。
「一太刀も当てられんとは・・・。」
 遠ざかるノズル光を見送り、アルベロー少尉は悔やみながらも、カタニアへの帰還を部下に指示する。皆の機体の損傷が軽微であったことは幸いだった。

 カタニアにバルクーナ中尉とハルナ准尉が戻った時には、カタニアの砲台の大半は吹き飛ばされ、メインエンジンのノズルも損傷し、巡洋艦としての働きはしえない鉄の塊と化していた。僅かな抵抗程度に、対空機銃が闇に向けて銃弾をばら撒いているのが見えた。それが追っているのは、ネオ・ジオンのMSに違いなかった。
 友軍のMSは? バーセス中尉は? バルクーナ中尉は友軍機をモニタ内に探す。
「バルクーナ中尉、バーセス中尉のハイザックです。」
 ハルナ准尉は岩塊の陰にハイザックの上半身を発見した。コックピット・ブロックは原型を留めていない。その模様をモニタに確認したバルクーナ中尉は声も出なかった。
「敵の数は三機・・・、いや、四機。ひとつ、友軍機と交戦中。カタニアの下です。」
 ハルナ准尉はカタニアの下面に向けて一気に加速した。ハイワーズ曹長のハイザックが、白いゲルググに追い回されている。
「ハルナ!カタニアからMSを引き剥がせ!」
 不意をつかれたガザDは、バルクーナ中尉のビームをかわすことが出来ず、胴体を貫かれる。空を掴むように一瞬動かなくなったガザDは、バルクーナ中尉の89バーザムが横をすり抜けた後、炎に包まれた。
「ハイワーズ!」
 白いゲルググに向けて放ったビームは、瞬きの間ほどの時間、ゲルググの足を止めた。片腕を失っているハイワーズ曹長のハイザックは、ビーム・ライフルを乱射しながら、カタニアの側面に逃げる。その動きに同調しながら、ハルナ准尉はビーム・ライフルをゲルググに撃ち込んだ。白い機体が尾を引くように、旋回しながらビームをかわしていく。ハルナ准尉が狙いすましたビームは、ゲルググの肩装甲に弾かれ、ダメージを与えることが出来ない。
「対ビーム・コートだと!」
 吐き捨てるように叫んだハルナ准尉は、ビーム・サーベルを抜いて間合いを詰めようとした。白いゲルググはくるりと回って、ハルナ准尉の89バーザムに向かってくる。
「ハルナ准尉、突出するな!」
 横からバルクーナ中尉のビームがゲルググに向かっていく。ゲルググの肩装甲が持ち上がると、浅い角度でビームを弾いた。
「可動するのか!」
 更に狙いをつけようとしたところで、先ほどビームを弾いた装甲の裏からアームが出てくると、逆にバルクーナ中尉の89バーザムに向けてビームが放たれた。同時に逆の肩の装甲も起き上がり、アームの先から出たビームがハルナ准尉のビーム・サーベルを受け止める。
episodef2a.jpg
 肩に被弾したバルクーナ中尉は、よろけながらもビーム・ライフルをゲルググに向けて放った。
 ゲルググはハルナ准尉の機体に回し蹴りを加え、跳ね飛ばすと、再度肩の装甲でビームを弾いた。
「化け物か!」
 機体の体勢を整えながら、ハルナ准尉は白いゲルググの攻撃に備えシールド越しにビーム・ライフルを構えた。
「エンドラ級巡洋艦、他一隻急速接近中!」
「艦砲、七割沈黙! 迎撃出来ません!」
「撃てる砲は各個砲撃! 総員対ショック防御! MSはどうしているか!」
 悲鳴に近い怒号が飛び交うカタニアのブリッジでは、全員が恐怖と戦っていた。恐らく、無傷のエンドラ級巡洋艦と砲撃戦を行えば、カタニアは撃沈される。それは否定できない状況だった。
「ちょこまかと!」
 ハルナ准尉とバルクーナ中尉の二人がかりでも、白いゲルググの動きを止めることは出来ない。こいつが、コットス少尉を落とした、例のゲルググであることは間違いなかった。多少なりとも腕に自信のあった二人であったが、こうも攻撃をかわされると、相手のパイロットが尋常でないことが肌身にしみて、背筋がゾクゾクしてくるのを感じていた。

「シャムニーがやられたか…。間もなくハイドラが通過する。引くぞ!」
グルグル回るコックピットの視界の中、ライム・シュナイダーは周囲のガザDに指示を出す。傍らのバーザムは臆せず食い下がろうとしている。ビーム・ライフルの銃口が向けられ、反射的にロールしながら、アレキサンドリア級重巡洋艦のブリッジの陰に回り込む。一瞬敵の視界から離れた直後、ガザDと共に、一気に戦闘域を離脱した。
 すれ違いで、ハイドラからのビームが幾筋もアレキサンドリア級重巡洋艦に向かっていった。花火のように光の球が船体を覆っていくのが、遠ざかっていてもわかる。
 最大戦速の巡洋艦に、MSが着艦するのは極めて危険な行為だったが、ハイドラと輸送艦の足を止めるわけにもいかない。めいいっぱい加速しても、回収用のネットに引っかけられた時の衝撃は、巨大なハンマーでぶん殴られたような感じだった。リニアシートでない時代ならば、首の骨が折れていただろう。
「ライム様、ご無事で何よりです。」
 ベルケ大尉の声が聞こえて、正直ほっとしたライム・シュナイダーは、パネルに表示されているハイドラの航路をチェックし出した。すでにアレキサンドリア級重巡洋艦との距離はぐんぐんと離れて行っている。追撃してこれるほど、アレキサンドリア級重巡洋艦の攻撃に手を抜いてきたわけではないが、仮にアレキサンドリア級重巡洋艦が最大戦速で暗礁を抜け出したとしても、もはや追いつける距離ではなかった。輸送艦も無事についてきている。このまま、予定通りにL1の暗礁に入ってしまえば、作戦は成功だ。
 L1の暗礁宙域には資源採集用の小惑星があり、ここにはジオン公国軍関係者が多く居住している。ジオン共和国や他のサイドとの交易もある為、生活水準的には地球のスラムや、月面最下層エリアよりも安定した生活が送れているようだ。
 ネオ・ジオン戦争が終了し、地球連邦軍への投降を拒んだネオ・ジオン残党は、このP1という小惑星を目指すものが多かった。ここは属名をパラオといい、その後のラプラス戦争での舞台の一つとなる。
 先の戦闘から十二時間後、無事に避難民の輸送船をP1に誘導できたワンズ中佐は、キャプテンシートに深く座り、帽子を被り直した。ほっとするのもつかの間、補給を受けた後、ハイドラは再び暗礁を渡りながら情報収集に向かうのだ。特にネオ・ジオン戦争で兵器として使用された小惑星アクシズと、グリプス戦役後に秘匿されたグリプスの所在調査が、最重要事項として挙げられている。

「間抜けだ! 愚かすぎる!」
 カタニアの艦長室では、ブガディー中佐が怒鳴り散らしながら、頭を抱えていた。傍らでは副長のマディ・ハフナー大尉と観測班の班長が萎縮して立っていた。先のネオ・ジオンMSの接近を感知出来なかった釈明を求められていたのだ。ブガディー中佐がいくら吠えようとも、つまるところの原因は観測員の怠慢に他ならない。デブリや岩塊を伝って、カタニアに接近したとはいえ、途中途中の反射光は光学センサには捉えられていたはずだ。熱感知を避ける為に、スラスターの使用を控えていたり、放熱に遮蔽をかけていたりと、隠匿性能の向上によって、MS検出の難易度は上がったが、最初に僅かな反射光を捉えた段階で、アラートを上げ、周囲の索敵レベルを準戦闘態勢に引き上げることも出来た。
 大半のクルーがグリプス戦役後やネオ・ジオン戦争後に巡洋艦勤務となった者ばかりで構成されているカタニアとしては、要所に配置された班長やリーダーの責任は大きかった。
 今回は、敵がこの宙域通過を最大の目標としていた節があった為、たまたま生き延びたにすぎず、カタニアは撃沈を免れた。本来の艦隊戦ならば、間違いなく皆ここにはいなかったであろう。そういったことをこんこんと話すも、果たして若い部下たちにどれほど伝わるだろうか…? ハフナー大尉は内心、そんなことを考えていた。
 アルベロー少尉らがカタニアに帰還した時、カタニアは沈没寸前に見えた。これが宇宙でなく海だったら、間違えなく沈んでいただろう。一時地球のインド洋守備隊にいたことのあるアルベロー少尉は、ふと思った。バーセス中尉は戦死、デジョン曹長とハイワーズ曹長のMSは中破していた。バルクーナ中尉とハルナ准尉のMSも一部損傷し、カタニアの防衛戦が、どれだけ激しかったかが垣間見えた。
「艦長、ずいぶんとお冠らしい。七人も死人が出たんだ。無理もないか…。」
 バルクーナ中尉は、ブリーフィングルームに入ってくるなり、頭の上で角を作る真似をした。ハルナ准尉も苦笑いする。バーセス中尉が戦死したが、ここにいるメンバーは、明らかに人の死に慣れすぎている感じがあった。被弾したカタニアでは、機関員や砲術士が六名死亡、十五人が負傷している。どこか心を閉ざしたままだったハルナ准尉が、少しはマシになってきているのは、ネオ・ジオン残党という敵がいるからか? バルクーナ中尉は、硬めのソファに腰を下ろしながら、ちらとハルナ准尉を見た。苦笑いは消え、いつものひょうとした雰囲気で、ハイワーズ曹長の話を聞いている。デジョン曹長だって、上官のバーセス中尉が戦死したばかりだが、大きく変わった素振りはない。
 若いパイロットは、そういうものなのか? それとも、慣れすぎてるのか? かえって陽気を装っていた自分が、ひどく幼く思えて、バルクーナ中尉はため息をついた。
 戦闘から十五時間後、メインエンジン・ノズル一部の修理が完了し、ようやく自力航行できるようになった。それまでは姿勢制御用のジェットや、エア・ブローで岩塊やデブリを避けるのがやっとで、暗礁に集う岩塊やデブリと共に、ゆっくりと流されるままだった。間違いなくドック入りは必要で、もっとも近い連邦軍拠点といえばコンペイトウであるが、L1からL5までの移動は、正直時間を要しそうだった。暗礁宙域を離れなければ、コンペイトウへのレーザ通信もままならず、曳航してもらえそうな艦船を呼ぶのも同様の時間を必要としそうだ。本来、この暗礁宙域で索敵任務だったわけだから、あと一日半は定時連絡がなくとも、コンペイトウは何も疑問を持たない。自力でこの宙域を脱出する他なかった。
 ブガディー中佐はL5へ進路変更とともに、通信可能域への早期到達をブリッジクルーに指示した。MSパイロットは交替で待機となったが、いてもたってもいられず、各MSの修理や調整に自主参加していた。
 翌日、メインエンジンは三十%出力まで回復し、コンペイトウとの通信可能ラインまで移動することが出来た。画像処理しても歪みは治まらない映像だったが、スクリーンに投影された瞬間、ブリッジでは歓声が上がったほどだ。
 ネオ・ジオン残党と思われるエンドラ級巡洋艦一隻と、輸送艦一隻が暗礁宙域内で逃走した旨を報告したが、コンペイトウ鎮守府からの指示は特になく、予定通りコンペイトウへ一時寄港し、暫定修理後にルナツーへ迎えとのことだった。暗礁宙域内の鉱山衛星などの捜査は別の機会に行うとのことで、取り逃がしのおとがめもなく、ブガディー中佐やハフナー大尉は肩透かしを食らったようで、拍子抜けしていた。

 予定を大幅にずらして、ルナツーにカタニアが帰還したのは、U,C,0089の五月に入ってからだった。コンペイトウに寄港した際の仮修理予定が、安全性から本修理に変更となり、コンペイトウのドック入りとなってしまった為だ。
 ルナツーで待ちくたびれていたフェリー少尉とオーバニー軍曹には、おさがりのネモが配給され、ルナツーのパトロール部隊に臨時編入されていた。カタニア帰還と入れ違いで、臨時配属していたサラミス級巡洋艦 ”ヒライズミ”はパトロールのシフトに入ってしまった為、フェリー少尉らが、カタニアに乗艦したのは、カタニア帰還の十日後だった。
「ハルナ少尉! …?」
 足を踏み入れたブリーフィングルームにいたのは、フェリー少尉にとって見覚えのある人物だった。しかし、顔を上げた彼の襟章には、少尉ではなく准尉のものがついていた。いぶかしげな顔を見せているフェリー少尉に、ハルナ准尉は起立し、敬礼した。
「ロベルト・フェリー少尉、ご無沙汰してます。」
 言葉を失ってぼうっと立っていたフェリー少尉の横で、オーバニー軍曹が敬礼して返す。一部始終見ていたバルクーナ中尉は、立ち上がって彼らに近づいてきた。慌ててフェリー少尉も敬礼する。
「ロベルト・フェリー少尉、及びマイク・オーバニー軍曹、カタニアMS隊に編入となりました。以後よろしくお願いいたします。」
 直立のまま、フェリー少尉はバルクーナ中尉に挨拶する。傍らで立っているハルナ准尉がクスと笑っているのが、視界に入って、フェリー少尉は複雑な気持ちの中、少し安心した。
 当面はバルクーナ隊、アルベロー隊の他、フェリー隊として二名編成で任務に当たる。先日の戦闘で思わぬ損失が出た為、パイロットの補充が間に合ってなかった。
「驚きました。地球にいると聞いておりましたが、同じ艦に配属されるなんて。」
 年齢がフェリー少尉より、一つだけ上のハルナ准尉であったが、敬語で話しかけた。
「いいですよ。ハルナ准尉。お互い、いろいろあったと思いますし…。」
 準待機の間、二人はお互いにあったこれまでの事を話した。フェリー少尉は一年戦争直後ナッシュ・バルドが戦死していたこと、失明し、除隊を希望したランツ・オーバートを、コンペイトウから地球へ連れ帰ったこと、ロシュ・ハーディーと共に戦ったアフリカ掃討作戦のこと、そして…、再びアフリカで再会したロシュ・ハーディーがネオ・ジオンとの戦闘で死亡したことを話し、ハルナ准尉は、デラーズ紛争の星の屑でウォレス・マクファーソンが戦死していたこと、デラーズ紛争後にティターンズに配属されたこと、グリプス戦役後投降し、降格にてルナツーの部隊に編入となったことを話した。
 ハルナ准尉は、デラーズ紛争の直前に、救出したシャトルに乗っていたロシュ・ハーディーと会っているが、まさか、ネオ・ジオン戦争に参加していたとは…、正直衝撃的な内容だった。ロシュ・ハーディーは除隊したとはいえ、一年戦争を戦い抜いた猛者だ。その彼が戦死するなんて…。
「ええ、ハーディー教官は、寄せ集めで組んだネモに搭乗し、ネオ・ジオンのバウという、当時新型MSと相打ちとなりました。Ζプラスに乗っていた部下をかばったものと思われます。こちらが、当時の検証資料です。」
 フェリー少尉は個人端末から、レポートを呼び出した。半壊したネモとバウの無残な姿が映し出される。到底助かりそうもない状況だったろう。レコーダに残っていたネオ・ジオンのパイロット情報を見て、ハルナ准尉は目眩がした。
「ジルゲイ・カラルデ…? あのカラルデなのか?」
「知っている方だったんですか?」
 もしかしたら、同姓同名の者かもしれない。かつてジルゲイ・カラルデ少尉は、ハルナ准尉の部下だった。同じくティターンズに所属し、グリプス戦役で行方不明となった。乗っていたハンブラビは、バラバラになっていて、コックピットブロックはついに見つからなかったのだ。
 実際にティターンズにいたカラルデだったのか、MSのレコーダの記録では、それ以上のことはわからない。きっとアクシズのデータサーバにアクセスしないと、わからないだろう。当時は投降を拒んだティターンズ兵が、宇宙、地上を問わずネオ・ジオンに合流したと聞く。ハルナ自身が収監されていた間、カラルデはネオ・ジオンの一員として、宇宙にいたのかもしれない。ハルナ准尉の思考はグルグル回っていた。事実、そうだったとしたら…、何と悲しいことなのだろう。運命の悪戯なのか…、自分の同僚同士が殺し合ったなんて。
 顔面蒼白で小刻みに震えているハルナ准尉を見て、フェリー少尉は、ハルナ准尉の肩に手を乗せた。

 U,C,0089 五月一日付けで発令された、大質量アステロイドの監視体制の再編成により、幾分か地球連邦軍のパトロールが強化された。先のグリプス戦役やネオ・ジオン抗争で、大質量破壊兵器としてアクシズが用いられたことから、地球圏に存在する大きな小惑星に関して、地球連邦軍の査察が入ることになった。L2のコア3を破壊したアクシズは、ほぼ原型を留めており、資源衛星として再利用する為に、関係機関が立ち入り調査に入っていたことで、ハイドラはアクシズに近付くことが出来ないでいた。
「問題はグリプス2か…。あれが、何処にあるかだな。」
 ワンズ艦長は、キャプテンシートに埋もれながら、メインモニタに映る地球圏のCGを見ていた。ハイドラに残るネオ・ジオン残党は、今更ジオン再興など考えてはいなかった。ただ、自分達の居場所を認めて欲しいだけだった。自分達の存在そのものが認められないのであれば、降りかかる火の粉を払う為に、最小限の武力を持つ他なかった。同様に、自らを一掃できるような大量殺戮兵器の存在はないに越したことがない。
 ジオン…、それだけで、一年戦争直後の、あの悲劇が繰り返される可能性は否定できない。旧世界の民族弾圧…、虐殺、人間の尊厳など微塵もない、悲劇と呼称するには、あまりにも無念すぎる血と肉の現場は、一部のジオン公国軍関係者には知られた事実だった。ネットには興味本位のスプラッタもの、マニア向け映像として流出し出したと聞く。恐らく、旧ジオン公国軍人全員が、それを目にしたら…、再びテロリズム、強いては戦争が再燃してもおかしくないだろう。
「エウーゴに奪われたグリプス2は、ハマーン戦争時には、エウーゴや連邦軍の正規管轄から外れ、何処かへ移動されたらしい。ジオンシンパからの情報も、そこで途絶えている。」
「エウーゴには多くの公国軍出身者がいたのだろう? 何故だ?」
 ベルケ大尉のコメントに、ワンズ艦長は不思議そうに問いかける。
「エウーゴのスポンサーが裏で暗躍していたらしい。」
「アナハイムか?」
「いや、もっと根っこの方らしい。」
「連邦政府を裏から牛耳っているゲス共か…。」
 一年戦争からこのかた、地球連邦軍の多くの兵は、それこそ死と隣り合わせで任務についてた。ジオニズムが自然派生し、立場の違いから殺し合いになったとは言え、血を流し涙を飲んだのは、現場の双方の兵と、そして犠牲になった民間人だった。そういった状況を、まるで別世界のことのように見てきた連中がいる。多くの民と兵の生死は、そいつらのほんの一動作で左右されるのだ。それでも殆どのそいつらは、我関せず…、晩餐会や舞踏会に明け暮れ、日々財を蓄えることと、利権を得ることに執着している。
 そういった薄汚れた世界の、ほんの末端をベルケ大尉も見てきたことから、ある意味シュナイダー家が落ち潰れたことに、ひと安心していた。ライムお嬢様やレズンお嬢様を、薄汚れさせることなく高貴のままに置いておけると思ったからだ。薄汚れる代わりに、血で手は染まっているだろう? 心の奥底のベルケ大尉自身が訴える。それしか選択肢が無かった訳ではあるまいに…。
「コロニー再生計画にまぎれて、どこかで修理するはずだ。コロニー公社にいる同志からは何と?」
 デッキから上がってきたライム・シュナイダーは、グリプス2の行き先に執着していた。
「難民対策で動き出したのは、サイド3からですが…、さすがに共和国の膝元ではないかと…。」
 ワンズ艦長は帽子のつばで表情を隠しながら答える。
「憶測ではなく、確証が欲しい。今はアクシズは放っておこう。動けるのはわれわれだけなのだから、各バンチひとつ一つ洗っていくぞ。」
 ワンズ艦長もベルケ大尉も、やれやれといった感じで、渋々頷いた。

「あれから、赤いエンドラも、白いゲルググの情報もない。L1の何処かに潜伏してやがるに違いない。」
 バルクーナ中尉は待機シフト中、ぼやいている。グリプス戦役やネオ・ジオン抗争が終わり、遅ればせながらも宇宙では復興の兆しが見えていた。コロニー公社や民間企業は、破損したコロニーの修復に取り掛かっていたし、各サイド周辺の情勢も比較的平穏になってきていることから、農産物の増産も着手されるようになり、一年戦争後とは異なるにわか景気が訪れていた。
 それでも、U,C,0089 八月二十五日に発令された経済制限令は、宇宙に住む人々に再び悪い印象を与える結果となった。これは戦後景気により再び経済活動が活発になったコロニーや月面都市の発言力を封じ込める為に、地球連邦政府よりもスペースノイドの側に立った発言、活動を行ったコロニーや都市への経済制限をかけたのである。事実上の一方的な経済制裁を受けて、再び宇宙では火種がくすぶる結果となった。
 地球連邦政府は過去の戦争、抗争から何も学ばなかったとみてよい。それは過去の戦乱をくぐり抜けて来た地球連邦軍の兵ですらわかっていたし、落胆していた課題だ。しかし各地で起きるデモを鎮圧しに行く度に、「不公平で不幸だから殴りつけてもいいんだ的な野蛮な連中」という印象が塗り重なっていくことに、双方の当事者達も気づいていなかった。
 このような中、地球連邦宇宙軍は各サイドへの駐留を再開し出したのである。全く歴史は繰り返されるとはこのことだ…。歴史学者はそう思ったことだろう。
 U,C,0089 十月に入り、カタニアはL4 サイド2の宙域に来ていた。グリプス戦役でサイド2では、ティターンズによるハッテ大虐殺が行われた。これによりティターンズとエウーゴが、この宙域で戦闘を行っていたこともあり、大きなデブリも多く、未だ掃海作業中であった。
 バルクーナ中尉のぼやきを背中で聞き流しながら、ハルナ准尉は船窓をぼんやりと眺めていた。かつてティターンズに所属していた頃は、サラミス改級 トリエステの中から、この宙域を見ていた訳だし、実際にMSに乗って戦闘を行ったことは一度や二度ではない。
 ティターンズが人道を外れていっていることに気づきながら、何も出来ず、悶々としていた頃だったと思う。わずか二年ほど前の話なのに、遠い昔のようだ…。そんなハルナ准尉の目に、哨戒任務から帰還してきたフェリー少尉らのネモが映った。一旦艦の横を通り過ぎた三機のネモは、船窓から見えなくなった。カタパルトデッキに回ったのだろう。
 そう、九月にフェリー少尉の下に配属されたイジェン准尉という男は、どこか不思議な感じがする奴だった。グリプス戦役に参加し、その後北米にいたというが、どことなく機械的で、不思議というよりは不気味というべきか。確かに僚艦に、同じような名前のパイロットがいたかもしれないな…、もしかしたら、そいつもティターンズだったのかもしれない。ハルナ准尉は、考えを巡らせる。来月になれば、もう一名フェリー隊に配属だそうだ。同じく北米上がりと言っていたが…。資料を見て、フェリー少尉はひどく反対したという。知り合いだったのだろうか?
「バルクーナ隊、〇三三〇でデッキ待機だ。寝ぼけるなよ。」
 管制室からインターホンが入る。バルクーナ中尉は、待ってましたとばかりに立ち上がった。デジョン曹長とハイワーズ曹長は、簡易ベッドからもそもそと出てきた。ハルナ准尉は思考を巡らせるのを止め、ヘルメットを手に立ち上がった。
 カタニアに関しては、ジオン残党、ネオ・ジオン残党との戦闘は、この先暫くなく、各サイド、バンチ周辺でのデモの警備、哨戒が任務の全てだった。例の白いゲルググが所属する赤いエンドラに関しては、カタニアへは直接、捜索任務が与えられておらず、友軍からの目撃情報を待つばかりだった。暗黙の了解として、白いゲルググ、赤いエンドラは、カタニアクルーのトラウマとなって、脳裏の片隅でとぐろを巻いていた。いつか、再開したら…、その時はいつぞやの借りを返してやる、皆そう思っていたのである。
 しかし、年を越したU,C,0090 一月になっても、カタニアのクルーの心を躍らせるような情報は飛び込んでこなかった。

「大佐の噂、知っているか?」
 U,C,0090 二月の末、月のアンマン市のジャンクヤードで、フィンシャー・ロレンツォは、エルセカに声をかけた。
「グリプス戦役で行方不明になった後は、いろんなサイドで大佐を騙る輩が飲み屋に現れたとか…。」
「いや、改装仕立てのスウィート・ウォーターに潜伏しているという噂がある。今日、旧ジオン系の運送屋がこっそり話していた。」
「本当に…? 赤い彗星もいよいよ隠居ですか?」
「それがな、ちょいちょいアナハイムと接触しているらしいんだ。」
「アナハイム・エレクトロニクスは、エウーゴのスポンサーでしたからね。」
 パワー・クレーンのモータ電源を切ったエルセカは、今日の仕事を切り上げようとしていた。ロレンツォはドーザーのキーをエルセカに放ると、ドーザーのタラップから飛び降りる。
「それがな、何か…、大物の発注をかけているらしいんだ。」
「コレクション用に赤いザクでも、頼んでいるんじゃないですよねえ。」
 冗談っぽく笑っているエルセカに、ロレンツォは無表情で立っている。
「そんなレベルじゃないようなんだがな…。」
「まさか…。」

再び、バーザムを作成。その4 完成編 [HCM-Pro]

ようやく、エアブラシしました。
IMG_2443.jpg
ライトグレーとダークグレーのツートンです。
ガンダムMk2の基調色を再現してます。所々パネルラインが残ってますが(苦笑)
IMG_2444.jpg
こちら背面。バックパックはガンダムMk2のものをほぼ残しました。
ビーム・ライフルもガンダムMk2のものを流用してますが、ライフルの側面にカバーをつけています。ライフル・シールドってヤツですね。
IMG_2446.jpg
上半身アップ。今回はモノアイ、ちゃんとピンクで塗装してます。
IMG_2456.jpg
そう、せっかくなんで、ティターンズVer,のシールドも塗装して、ダブルシールド仕様は健在です(笑)
IMG_2459.jpg
以前作成した、試作バーザムと並べてみました。
腰位置は同じくらいですが、胸部幅を拡張しているので、89の方ががっしりした感じです。
頭部飾りも「タケノコ」はやめて、直線的なブレード・アンテナにしました。
IMG_2460.jpg
背面比較。胴体背面にバーザムの面影はありません。
後だけ見ると、ガンダムMk2系列に戻っている感じになるかと。
趣味的デザインで作ってしまったので、ちょっと格好良すぎたかな?

再び、バーザムを作成。その3 [HCM-Pro]

89バーザムの進捗です。
頭部を細工したり、腕を延長したりと、細かい加工を継続中。
DVC00311.JPG
結構、形になったので、シールドを装着してみました。きっと本編中ではありえない「ダブルバインダー装備」
リジュ・ルージュに対抗するなら、こんな感じの方がいいのかもしれませんが…(笑)
ジム3や、その後に出てくるジェガンまでのつなぎの機体にしか過ぎないわけで、性能的にはバーザムやMk2に毛が生えた程度ですから。
DVC00312.JPG
頭部アップ。もう少し加工が必要ですが、以前の試作バーザムよりはいい感じに仕上がってきたかと。
次は何を作ろうか…。

再び、バーザムを作成。その2 [HCM-Pro]

89バーザムの製作進捗です。
DVC00309.jpg
今回はハイヒール加工は割かし地味な感じで処理しました。試作バーザムでやったような、シークレットシューズはやめて、接地面積を小さくした足へ。
お尻の装甲は、ご覧の通りザクヲさんのシールドです。
胸部は一旦切り離した肩関節部を、プラ板挟んで再度接着。その上にプラ板で装甲を被せています。
肩装甲は前回同様のパテ盛りと、ルージュ製作で余った肩装甲のパーツを取り付けてます。
乗っかっている頭部は、試作バーザムの時の試作品。とりあえず乗せただけですので(笑)
腕の延長、すねの加工、足の付け根の装甲、頭部加工とヤマ場はまだまだ残っていますが、時間を見繕って作業中です。

再び、バーザムを作成。 [HCM-Pro]

Episode Fでハルナ准尉やバルクーナ中尉が搭乗しているのが、89バーザムと呼ばれる後期型のバーザム。
どうしても、普通のバーザムは出したくなくて、以前は試作型、で今回は後期型。
一旦は量産機として確立したバーザムだったものの、コスト面を重視するあまり、結局性能もコストも満たせない中途半端なものになってしまったのだが、その性能面をジム2以上にちゃんと引き上げ、ジム3につなぐものとして、少数生産された後期型バーザムという設定。
当然、ガンダムMk-2のムーバブル・フレームをベースに汎用MSを目指して味付けされた機体。
そう設定しておけば、あのアメフト選手のようなボディにこだわる必要もないものね。
DVC00307.JPG
前回同様、ガンダムMk-2(HCM-Pro 13-00ですが、ティターンズカラーではないので)をベースに改造開始。
試作バーザムで、改造ポイントは押さえておいたので、まずは本体からの削除部分を加工。
肩、肘、膝の装甲の一部撤去。足首のハイヒール化の為にかかとを切除。股関節の位置を5mmほど上へ(ハイヒールの為、全高が上がってしまう為、足の付け根を上げる(いわゆるハイレグ化(笑))
前回同様、頭部はガンダムから削り出し予定。
今回、試作と大きく異なるのが、肩の付け根位置の変更。アメフト・バーザムにするつもりはないのですが、前回の試作バーザムが、かなり貧弱に見えたので、肩幅をもう少し取ることに。
この為、胴体から肩の付け根部分をカットしている。
また、バックパックは試作バーザムはジャンクの寄せ集めだったが、今回はMk-2のランドセルから加工していく予定。
UCの4巻が出る前に、仕上げたいなあ。

【U,C,0089 Jan~Mar】Episode F1 「リーアの白い魔女」 [A Piece of U.C.00XX]

 U,C,0089 1月17日 ネオ・ジオン戦争はサイド3のコア3での戦闘をもって終結した。U,C,0088 10月30日に行われたアイルランドのダブリンへのコロニー落としの成功をもって宇宙に帰還したネオ・ジオン艦隊は、その後ザビ家の血筋を持つというグレミー・トトが反ハマーン・カーンを掲げた為、ネオ・ジオンは二分し内紛状態に陥った。これにエウーゴのネェル・アーガマが参戦し、グレミー・トトとハマーン・カーンは倒されたという。
 エンドラ級巡洋艦 ヒュードラを指揮するシュプリッツァ・マイヤード大佐は、ハマーン・カーン派として、グレミー・トトのニュータイプ部隊に対抗、健闘虚しくMSパイロットのコーツァらと共に、コア3周辺で散った。

 ネオ・ジオン戦争の終結は地球連邦軍の再編を加速させることになった。明確な敵を持たない地球連邦軍の士気は低下し、合理化の名の下に戦力の改変が敢行されていく。反政府組織の鎮圧が完了している地域の前線基地は閉鎖された。また、コストがかかるMSは主要基地に集約されると同時に、部隊の再編成が図られ、余剰パイロットは宇宙に再配備されるようになった。
 これにより、アフリカ マサワ基地にいたロベルト・フェリー少尉はマイク・オーバニー軍曹と共にルナツーへ異動となった。
「九年間か…。長い地球暮らしだったな…。」
 ため息にも似た声色で、フェリー少尉はつぶやく。アデン宇宙基地から打ち上げられるシャトルには、オーバニー軍曹の他、多くの宇宙異動組が同乗していた。
「フェリー少尉は一年戦争に参加していたんですよね。宇宙って、どうも実感がわかなくて…。」
「オーバニー軍曹は初めてか?」
「はい。親父も祖父もアメリカで医者をやっていたもので、宇宙には出たことがないんです。」
 少々不安そうにオーバニー軍曹は答えた。その姿に、フェリー少尉は、初めて地球に降りた時の自分の姿を重ねていた。あの時のロシュ・ハーディーが今の自分の役回りなんだと、訳も判らない使命感に囚われていた。
「慣れると、世界観が変わるぞ。まあ、大丈夫だ。」
 それでも、地球に残してきたケリー・ファイラス軍曹は気がかりだった。ネオ・ジオン戦争が終結しても一向に回復しないままだったファイラス軍曹は、2月に連邦軍専門施設に転院して行った。北米にある療養所だというが、悪名高きニュータイプ研究所という可能性も否定できない。フェリー少尉の力では、名目上の複隊はおろか、除隊させて匿うことも適わなかった。
「すまない…。ケリー。」
 心の中でつぶやきながら、フェリー少尉は打ち上げの時間を待つしかなかった。

「進路クリア。大方、ハズレだろうがな。行って来い。」
 乱暴な管制官の言葉にムッとしながらも、カタパルトの衝撃に咄嗟に身構えた身体は、MSと共に宇宙空間に放り出された。
「ハルナ准尉、そのままの方向で二次加速。右舷の索敵を頼む。」
「了解、バルクーナ中尉。」
episodef1b.jpg
 ライトグレーにカラーリングされたMSは、鈍く光って加速していく。形はグリプス戦役後期にティターンズに導入されたRMS-154 バーザムに酷似している。装甲を一部変更しているが、ムーバブルフレームはRX-178 ガンダムMk2の簡易版の為、シルエットとしてはガンダムMk2のレストア品のようであった。便宜上、89バーザム、またはバーザム改と呼称している。とはいえ、U,C,0089の時代においては、旧式MSであることには他ならない。地球連邦軍宇宙軍に配備されだしているRGM-89 ジム3よりも性能的には劣っていた。度重なる戦乱により、圧倒的に予算が不足していた地球連邦軍は、旧式機だろうが、ティターンズから接収したものだろうが、使える装備は流用して、配備していた。
 後方に小さくなっていくアレキサンドリア級重巡洋艦 カタニアを確認しながら、エイド・ハルナ准尉はセンサ情報をチェックする。ネオ・ジオンの残党部隊の確保が、彼らの任務だった。
 ネオ・ジオン戦争終結後あたりから、地球連邦軍はようやく重い腰を上げた。ハマーン・カーンやグレミー・トトといった党首を失い、右往左往するネオ・ジオン軍に取締りをかけたのだ。大半の残存部隊は反撃もそこそこに各所に逃走を図っている。反撃をかけようものなら、コンペイトウやルナツーから選抜された追撃部隊によって、殲滅させられるのだ。第三世代、第四世代と高性能機を誇るMSを持ちながらも、その指揮系統に難があるネオ・ジオン残党は、圧倒的物量を誇る地球連邦軍艦隊の前に、無念にも散っていった。
 エウーゴ関係者の話では、ハマーン・カーンが立てていたミネバ・ザビは影武者で、本人はグリプス戦役直後に行方不明になっているという。それには同じくグリプス戦役後に行方不明となっているシャア・アズナブル、いや、キャスバル・ダイクンが関与しているというのがもっぱらの噂だった。
「ジオン討伐って…。やっていることは前と何ら変わってないんだけどな…。」
 全天周モニタに映るデブリは、数ヶ月前のネオ・ジオン戦争の決戦の名残で、コア3にアクシズが激突した残骸だ。その残骸を伝ってネオ・ジオン残党部隊が、サイド3とL2付近を行き来しているという。
「私語は慎め、ハルナ准尉。」
 バルクーナ中尉の声の圧力に、元ティターンズが生き残れるだけマシと思え、と言われているような気がしてならないハルナ准尉は、萎縮して肩をすくめる。
「申し訳ありません。中尉。」
 U,C,0088に、拘束を解除され、二階級降格の上、ルナツーのパトロール隊に編入された元ティターンズパイロットのエイド・ハルナは、カタニア所属のエリオ・バルクーナ中尉の小隊に配属された。サイド4出身のバルクーナ中尉は、デラーズ紛争に参加後、ティターンズには登用されなかった。エウーゴにも属さず、一貫して地球連邦軍人としてルナツーのパトロール艦隊に所属していた。元々ハルナ准尉もルナツーに所属していたことから、親しくはないものの面識はあった。その関係で、皆が嫌がる元ティターンズパイロットを預かり受けたのである。
 三十分ほどの哨戒任務を終え、バルクーナ中尉とハルナ准尉はカタニアに帰還した。
「やはり、誤認だったようだな。観測班に文句言ってやる。」
 バルクーナ中尉はヘルメットを脱ぐと、機体データのコピーを持って、デッキに上がっていった。その傍らでハルナ准尉は黙々と自機のチェックを続ける。
「おい、クロ。チェックリストは引き継がせるから、戻って仮眠を取れ。」
 整備班長であるキクマ技術中尉が背中から声をかけた。クロという別称は元ティターンズというところからつけられている。ティターンズのカラーとして濃紺が挙げられるが、親しみをこめて、いつからか、そう呼ばれていた。クロというのは日本語の黒からきているらしい。キクマ技術中尉は日系人だが、実のところ、彼がジャブロー時代に飼っていた犬の名前もクロだったことは、誰も知らない。
「了解。」
 ふらっと立ち上がったハルナ准尉は、ゆっくりと敬礼すると、タラップを降りていった。
 バルクーナ中尉といい、キクマ技術中尉といい、別にティターンズ出身のハルナ准尉に、特別な感情は持っていなかった。MS操縦に関しては、ティターンズの生き残りだけあって、腕も良かったし、実戦慣れもしている。思想的にニュートラルなハルナ准尉は、頼りになる存在だった。
 おおよそ、それを気にするのは…、その上の士官や、デスクワークセクションの一部の連中だった。エイド・ハルナの本質を見もしようとせず、ティターンズという看板だけで人を括る連中だ。
 そういうざらついた感触に麻痺したのか、ハルナ中尉の被害妄想も酷いものだった。新兵の頃、第16特務小隊の頃よりも萎縮しているし、自己を守る為に、無関心を装うっている。目下バルクーナ中尉の心配事はそれだった。よく精神鑑定にパスしたものだ。うつ気味のパイロットに背中を預ける身にもなれと言いたいが、満更他人のことも言えたものではない。周りを見渡せば、一年戦争からこのかた、何かしらのトラウマを抱えた奴らばかりだ。
 デッキに戻ってきたバルクーナ中尉は、ふらふらと控室に移動するハルナ准尉の背中を見送って、小さなため息をついた。

 L2からサイド3の軌道を横切る形に位置するカタニアは、比較的何もない宙域を静かにL4に向けて航行中だった。サイド3の宙域を脱出したネオ・ジオン残党は、L1、L4、L5の暗礁宙域か、地球軌道よりも外、火星やアステロイドベルトを目指すと推測されている。
 過去、デラーズフリートもL1の暗礁宙域に拠点を構えていたし、L4、L5に存在する過去の戦争の遺物群や、放棄された鉱山衛星群は身を隠すには格好の場所だ。
 大半のネオ・ジオン戦力は、最終決戦場となったアクシズとコア3にいたが、一部各コロニーへの先遣隊として駐留していた部隊は、本隊からの指示を受けることも出来ず、逃走を図った。その数は多くはないものの、それらの武装解除も行わなければならなかった。
 サイド3と月の間にはネェル・アーガマが駐留し、監視を続けているが、コア3の決戦で主力MS、ΖΖガンダムやΖガンダムを破損した上、運用していたシャングリラ出身の民間人が退艦してからというもの、非常に効率が悪い状態が続いているようである。
 そういった隙をぬって、ネオ・ジオン残党も逃走していると考えられるが、カタニア艦長のエディー・ブガディー中佐は、この二ヶ月、ネオ・ジオンを追った日々を正直無駄だと感じていた。あとはL4の暗礁宙域を三日間索敵すれば、任務は一時終了だ。コンペイトウに半舷上陸した後、ルナツーに一旦帰還し、補充要員を拾ったら次の任務だ。その頃には、がむしゃらな索敵は終了して、おおよそ目標地点は絞り込まれているだろう。そんな、何の根拠もないプランを思い描いて、ブリッジの先の暗闇を凝視していた。
「あと一時間ほどで、暗礁宙域のはずれにかかります。こちらが提出されている索敵プランです。」
 ブリッジクルーが艦長席に座るブガディー中佐にファイルを手渡そうとした時、前方のキラキラ光るデブリの渦から、光があふれ出し、あっという間にカタニアのブリッジの横をかすめた。ブリッジの装甲にスパークが走り、ビリビリという振動が艦内に伝わる。
 直後、戦闘配備の緊急アラームが艦内中に鳴り響いた。バルクーナ中尉やハルナ准尉も艦内に伝わる振動に、攻撃を受けていることを悟り、慌ててパイロットスーツに着替えようと更衣室に駆け込む。
「敵は? 」
 ブリッジに確認を取るも、ブリッジでは進路修正と情報収集で大騒ぎになっていた。
「素人じゃ、あるまいし。」
 同様に駆け込んできた、バーセス中尉は舌打ちする。ロン・バーセス中尉はバルクーナ中尉と同じく、一年戦争時からの連邦軍パイロットだ。カタニアにはMS部隊が四小隊存在し、バーセス中尉とバルクーナ中尉は小隊長を務める。バーセス中尉は部下であるグリプス戦役後パイロット達の育成に手を焼いていたが、バルクーナ中尉の小隊にはハルナ准尉以外いない。ネオ・ジオン抗争で編制が変わってしまったもので、現作戦後にルナツーに帰還し、補充を受ける予定になっていた。
「ミサイル来るぞ!」
「目標の割り出し急げっ! ん! 敵が目の前にいるかもしれんのに、火を出して位置移動する馬鹿がいるかっ!」
 ブリッジではブガディー中佐が怒鳴っている。ろくな実戦経験もないまま、配属されているクルーも多い。目下の悩みの種は練習艦と化しているカタニアのことだった。一年戦争時はサラミス級巡洋艦の副艦長だったブガディー中佐は、デラーズ紛争時にサラミス改級巡洋艦の艦長に抜擢され、コンペイトウの観艦式に参加していた。デラーズ・フリートがジャックしたコロニーを追跡し、最終的にはデラーズ・フリートと戦闘を行っている。
 グリプス戦役後にアレキサンドリア級重巡洋艦カタニアの艦長となり、ルナツー所属のパトロール隊として配備されたものの、程なくネオ・ジオン討伐の任を与えられ、遅ればせながらL2宙域に参上したのであった。
「MSが展開してくるかもしれん! 二小隊出させろ。カタニアの周囲十kmで警戒に当たれ! 敵の位置はまだわからんのか!」
「バーセスとコットスの隊を出します。」
 カタニアの遥か横を数本のミサイルが通り過ぎていく。おおよそ狙いを定めた距離で自動信管が作動し、明るい火の玉を上げていく。ほのかにその光を受けながら、カタニアはミサイルが飛んできた位置に、砲撃をかける。同時にハンガーの隔壁が開き、バーセス中尉らのMSが出撃しようと、MSをカタパルトにセットしている。

「正面、メガ粒子弾来ます。被弾はしません。」
「ようやく、気づいたか。前方のアレキサンドリア級は練習艦なのか?」
「識別コード上は、通常の巡洋艦のようですが、ライム様。」
 カタニアをデブリの陰から攻撃したエンドラ級巡洋艦 ハイドラのブリッジで、ライム・シュナイダーは最大望遠画像のカタニアを見ている。小さな光が僅かに瞬くのは、周囲にMSが配置されたことを意味する。
「ライム様、まさか…。」
 ライム・シュナイダーの横に立っていた初老の男は、彼女の瞳が輝くのを見逃さなかった。立ち居振る舞いは、軍人というより執事のようだ。
「ベルケ、再編した地球連邦軍の腕、確かめてくる。」
 ベルケと呼ばれた男は、心配が的中したと言わんばかりに頭を抱え、キャプテンシートの艦長を見上げる。
「艦長、一小隊を随伴願います。」
「ワンズ艦長、MS発進後、二十秒後に艦砲の一斉射。進路は向こうの左を取る形で。」
「了解、ミス・シュナイダー。エルトーの隊を付けます。」
「各員MS発進準備、及び主砲発射スタンバイ。」
 ハイドラの艦長、ワンズ中佐がライム・シュナイダーのプランを承認したことで、ブリッジクルーは、にわかに活気付く。様子伺いの攻撃から、久々の戦闘に移行した為だ。
 ハイドラは、L4 サイド6のフランチェスカに駐留していたが、グレミー・トトが謀反を起こしたことで、急遽サイド3に向かうところだった。その矢先にハマーン・カーンが戦死した情報を入手し、しばらくの間、暗礁宙域に潜んでいたのだった。
 ハイドラには、ライム・シュナイダーが駐留大使として乗艦していた。シュナイダー家はジオン公国建国以前から、サイド3圏で行政の一躍を担ってきた名家だ。しかしながら、一年戦争後、共和国制移行時には加担することが適わず、戦争で疲弊していたこともあり、シュナイダー家はデラーズ紛争移行は表舞台に出ることはなくなった。
 一年戦争後、マハラジャ・カーンを慕ってアクシズに身を寄せていた一族は、ハマーン・カーンの地球圏帰還と共に、再び表舞台に出てきた。グリプス戦役では艦艇やMSの開発、調達に尽力し、エンドラ級巡洋艦の開発にも関わっている。しかし、ネオ・ジオン抗争勃発に、ハマーン・カーンの暴走を感じた一部の者が、アクシズを離反しジオン共和国へ逃亡するという騒ぎがあった。
 機密情報を持ったまま亡命を図ろうとした一族を、自らの手で制裁を加えたのがライム・シュナイダーであった。シュナイダー家自体は事実上解体したようなものであるが、ライム・シュナイダーはハマーン・カーンの信頼を得て、ハイドラ指揮、及びリーアへの駐留大使を拝命したのであった。
 ハイドラのカタパルトに現れたMSは一見、白いMS-14 ゲルググに見えた。大きく張り出した肩の装甲は、ネオ・ジオン抗争の際にイリア・パゾムが搭乗していたMS-14J リゲルグにも酷似している。在りし日のシュナイダー家によってリゲルグを参考に、ゲルググをリファインしたもので、MS-14Re リジュ・ルージュ、単にルージュとも言う。一部の装甲にガンダリウム合金が使われ、白色のビーム・レフレクティブ・コートに真紅の装飾が入った機体はひと際目立つ。
episodef1a.jpg
「ライム・シュナイダー、ルージュ出る。」
 エルトー隊のガザDの発進に続いて、白いリジュ・ルージュが飛翔した。リゲルグと同様、スラスターが仕込まれた肩の装甲を覆うようにアクティブ・バインダを可動させると、一気にガザDと共に闇に消えた。

「前方、デブリの陰からエンドラ級来ます。一隻のみです。MSらしき飛翔物、幾つか離艦しました。」
「来るぞ! MS隊を迎撃ラインへ。他の隊も緊急発進かけろ。」
「バーセス中尉、コットス少尉の隊は、本艦前方十五kmでネオ・ジオンMSを迎撃!」
「カタニアは艦砲射撃しつつ、左五度修正。ミサイルは無駄にばら撒くな!」
 カタニアのブリッジは、ハイドラを確認したことでひと安心したのか、通常の訓練通りに各担当が任務を全うする。ブリッジからは、バーセス中尉らのMS隊が噴射光を上げ、急発進していくのが見えた。
 バーセス中尉らの小隊はハイザック四機、コットス少尉らの小隊はハイザック二機、ジム2二機という旧式機のみの構成だ。本来、カタニアはティターンズに配備されるはずだったが、就役直前にグリプス戦役が終了し、宙に浮いていたのをルナツーの地球連邦軍が接収した。ただし、MSは最新のジム3などの配備は間に合わず、同様にティターンズから接収したものや、ルナツーでストックされていたもので間に合わせている。ジェネレータ出力向上など、わずかばかりにチューニングが施されているが、当然パイロットからの信頼は低かった。
「中尉、前方に光! ネオ・ジオンです。」
「うろたえるな! アクシズ製の工作機械などに遅れをとるな! 演習通り組になって当たれ!」
 射程距離いっぱいからのビームが、カタニアMS隊を襲う。確かに機体は工作機械の延長上にあるガザDであるが、搭載されたナックル・バスターは大口径ビーム砲だ。減衰拡散しないまま直撃を受けると、ガンダリウム合金を使っていないハイザックやジム2はひとたまりもない。
 常人では、直撃するビームをかわすことなど出来ない。MSの観測機器の情報から、おおよその位置を算出し、予測射撃をしているに過ぎないものの、光学計測器や自機の振動など、多くの修正パラメータが加えられている。僅かコンマ何度かの射撃軸のずれが、数km~数十km先では、数百mものずれになるのだ。その上、お互いがものすごい速度で飛び回っているわけだから、思ったところに命中させる確立はほんの僅かだ。しかし、運が悪ければ…、この僅かな確立によって命を落とすものもいる。
 両者は距離を詰めていく。全天周モニタの中で、等倍でも接近してくるMSがわかる。三機のMA形態のガザDを確認して、コットス少尉はふんっと鼻で笑った。
「旧式だからって、なめんなよ。」
 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、編隊の最右翼にいたサーディー曹長のハイザックが光に包まれた。
「横から?」
 反射的に右を向くジム2も、ハイザック同様に火球に包まれる。ビーム攻撃を受けていることは確かだった。
「一旦散開しろ!」
 バーセス中尉は叫ぶと、ハイザックをクルクルと回して、一気に離脱する。ほんのひと呼吸取り残された、一機のハイザックは正面からのガザDの砲撃の餌食となった。
「新手は、どこだ?」
 コットス少尉は機体をロールさせて、どこに敵機がいるかモニタ情報をチェックする。全天周モニタには、クルクル回る視界の中で三つの火の玉がしぼんでいくのが映っていた。
「ひっ!」
 斜め下方からの急な接近警報に驚き、その機体がエウーゴのデータベースにあったネオ・ジオンのMS-14J リゲルグに七割がた似ているものだ、とパネルにインポーズされた瞬間、コットス少尉は、メガ粒子の束がコックピットに入って来るのを感じた。熱いと思う間もなく、コットス少尉を乗せたハイザックは真っ二つになる。その横を白いリジュ・ルージュがすり抜けていった。間をおいて二分されたハイザックは爆発を起こす。
 ガザDは距離を取りながら、バーセス中尉らを追い立てるように砲撃を繰り返す。まるで見えない網に追い込まれているようだと、バーセス中尉は歯軋りする。追い立てられる編隊の真横に何か白いものが食いついてくるのを感じて、ビーム・サーベルを抜いた。
「各機! まとまって一旦下がれ!」
 両断したジム2にビームを撃ち込んだ白いMSは、さらにハイザックに襲いかかろうと機体をひねった。バーセス中尉はビーム・サーベルを突き出したまま、その白いMSに向かっていく。
「こっちだ!」
 白いMSは振り向き様にビーム・サーベルを振り上げる。交差したビーム・サーベルはビームが干渉して弾けた。
「元気がいいのも、いるのだな。」
 バーセス中尉は一瞬女の声を聞いた気がしたが、構わずグレネードをばら撒くと、スラスタを目いっぱい噴射して、白いMSから離れる。退避行動に入っている友軍機を追うバーセス中尉は、敵が追撃してこないのを確認して、ほっとした。
「ゲルググのようだったが…。一瞬で四機やられた。あんなのが、まだいるのか?」

 ハイドラとカタニアは砲撃戦を行ったが、双方大したダメージもなく、それぞれMS回収に入る。砲撃戦を行いながら暗礁宙域に追いやられる形で、両艦ともデブリの海に身を隠す羽目になった。いや、それはカタニアの方だけだったのかもしれない。
 新規設計のエンドラ級巡洋艦といえど、アレキサンドリア級巡洋艦の火力には到底及ばない。真っ向勝負を挑めば被害は甚大だが、搭載MS戦力を削っていくことで防衛力をそげば、旧式のガザD部隊でも十分にアレキサンドリア級巡洋艦は仕留められる。その為なら、ひと当て、ふた当ては仕掛けてくるだろう。
「それで、こんな所で網を張ってやがるのか?」
 バルクーナ中尉は、バーセス中尉ら迎撃隊が五機のMSを失って戻ってきたことに驚きを隠せなかった。そのうち四機は、未確認のMS一機にやられたという。コットス少尉が戦死し、自分の小隊メンバー二名も戦死したことで、がっくりと肩を落とすバーセス中尉を見送って、辻斬り紛いのネオ・ジオンがこの辺りに潜んでいるかと考えると、バルクーナ中尉は、胃がムカムカしてきた。
「コットスの隊の生き残りは、うちに入れるぞ。弔い合戦だ。」
 バルクーナ中尉は、傍らにいたハルナ准尉に声をかける。弔い合戦? そんなことしてたら…、この連鎖は永久に終わらないな。ハルナ准尉は心の中でつぶやいた。
 ただ、ハルナ准尉はパイロットとして、そのエース級の白いゲルググに興味があった。もしかしたら、今までに合間見えた者なのかもしれない…。ふと、フィンシャー・ロレンツォが思い浮かんだが、裁判のおり聞いた話しでは、彼は月にいると言っていた。生き抜いた彼は、再び戦場に向かうことがあるのだろうか?
 きっと、ロシュ・ハーディー同様に、もう戦場にはいないんだろう。そう漠然と思った。きっと賢い者は、もう戦場などには足を踏み入れない。根拠なく、そんなことを考えていた。

「連中、寄せ集めに過ぎない…。私もコア3海戦に参加したかった。さすれば、ΖΖとかいう新型ガンダムと戦えたし、むざむざハマーン様を亡くすこともなかった。」
「何ということを…。ΖΖのパイロットはニュータイプと聞いています。ライム様の身に何かあれば、私めは先代や御姉妹に会わせる顔がありません。」
 ベルケ大尉は、戦闘から帰還し、幾分高揚しているライム・シュナイダーを鎮めるように話しかける。ライム・シュナイダーは、ニュータイプという単語に僅かに反応しつつも、パイロットスーツの襟元を少し緩めながら、ブリッジ中央に向かっていった。
「アレキサンドリア級のトレースは続けているか? 」
「暗礁の中で動いてません。」
「輸送艦の進路への影響は?」
「5%ほどの確率で接触します。」
 ライム・シュナイダーは、モニタに表示されている予測航路を凝視しながら考え込んでいた。後続の輸送艦には、アクシズから避難した一般市民が多く乗り込んでいる。コア3の決戦の前に、アクシズの居住区であるモウサはおろか、アクシズそのものを質量爆弾として使用したグレミー軍は、事前に多くの一般市民をサイド3方面に強制退避させたが、完全にアクシズから退避するまでの間、幾らかの民間人エンジニアが運用スタッフとして残留していた。それに退避し遅れた民間人なども含めた、いわゆる避難最終便がハイドラの後方から接近しつつある。行き先は暗礁宙域にある小惑星基地である。サイド3への直行を要望する声もあったが、サイド3周辺にはネェル・アーガマが展開している為、現時点では一旦小惑星基地に向かい、折を見てサイド3に向かう方が安全と思われた。
 無事にL4の小惑星基地に送り届けるには、前方にいるアレキサンドリア級重巡洋艦は邪魔な存在だった。いくら民間人が多く乗船しているからといって、そのまま素通りさせてくれるはずもない。何かと言い分をつけて撃沈されたとなっては、目も当てられない。過去ティターンズが台頭していた世であれば、間違いなく輸送船は沈められているだろう。今の連邦軍にどれだけ紳士的な部分が残っているのか、正直ライム・シュナイダーも計りかねていた。
「本艦は、輸送艦の盾となって、アレキサンドリア級を押さえ込みながら、暗礁宙域の縁に沿って進みます。MS部隊は暗礁宙域からアレキサンドリア級を包囲します。」
 ワンズ艦長はキャプテンシートの端末を操作して、正面モニタに作戦プランを表示する。
「戦闘開始後、五分したら輸送艦はハイドラの背後から加速し、デブリの隙間をぬって、P1の小惑星に向かう航路に乗ります。」
 各艦、MS部隊の動きを確認したライム・シュナイダーはプランを了承した。傍らにいた管制担当はデータのコピーをとり、各MS隊の隊長を呼び出す。
「現時刻より二時間後に作戦スタートだ。各MS隊が配置につくのを見計らって、ハイドラは輸送艦と共に最大戦速でアレキサンドリアの横を通り抜ける。私も出るぞ!」
 ライム・シュナイダーは、ブリッジクルーに指示を出す。先ほどの戦闘の熱も冷めぬままの連戦に、更に意気も上がってきた。ハイドラのクルーはネオ・ジオン戦争の序盤、サイド6のいくつかのバンチを制圧した後は、駐留部隊としてフランチェスカからほとんど動いていない。制圧時の戦闘以外は、演習と称してリーア領空外に出て、エウーゴの偵察部隊と小競り合いをする程度であった。ライム・シュナイダーも含めて、意気盛んな若い兵士達は、ネオ・ジオン抗争終結後の方が、その持てる能力を発揮する場が得られたのかもしれない。
 お目付け役のベルケ大尉の不安をよそに、勇ましさを感じるライム・シュナイダーは、ハイドラ内の若い兵士の信望を集めていた。グリプス戦役終盤にMSに乗るようになったライム・シュナイダーは、サイコミュ兵装の制御こそ出来なかったが、身体制御に優れ、MS操縦のセンスは良かった。一年戦争従軍のベテランパイロットとさほど変わらない能力を持っていたと言っても過言ではない。それに反するような名家のお嬢様という境遇から、一部からはニュータイプではないかという噂も流れたが、強化人間並みの感覚と反射神経を持ちながら、サイコミュ連動の脳波は微弱であるというのが、以前アクシズ内の研究所で出された結果だった。ニュータイプの定義解釈上の問題にはなるものの、ニュータイプの兵器としての特質部分のみが封印されているだけと解釈した研究員もいたが、ネオ・ジオンでの分類上では「ニュータイプではないエースパイロット」に加えられている。
 ライム・シュナイダー本人は口にはしないが、そういった扱いで、ある種の劣等感を頂いていることは推測されていた。それが、亡命を企てた一族への血の報復行為だったのかもしれない。しかし、仮にライム・シュナイダーがニュータイプであったら…、間違いなく、ネオ・ジオン戦争の中核に投入されていたであろう。その先で想定されるのは悲劇以外の何物でもないことは、過ぎた歴史が語っている。
「ベルケ、貴様も私の心配ばかりしていないで、ハイドラの為に働け。ワンズ艦長の足を引っ張るでないぞ。」
 困惑しているベルケ大尉に、ワンズ艦長は笑いを堪えていた。

「ここには、ジム3はおろか…、ネモもないのか?」
 ロベルト・フェリー少尉は、ルナツーに到着早々、案内されたMSデッキで思わず声を上げた。さすがに整備班もばつが悪そうだ。
「申し訳ありません。工房のラインも稼動しているのですが、いかんせん数が揃わず…。ゼダンの門のラインが使えると、大幅に生産アップ出来るのですが…。」
「軍費削減が厳しく、調達出来るMSの絶対数はおろか、保守部品の確保も限られております。」
 横にいたデッキ管理担当も、言葉尻は申し訳なさそうだが、態度は半ば投げやりだった。整備クルーの作業用ノーマルスーツも、破損箇所のあちこちにパッチが当てられ、表面の擦り切れぐらいも使い込みを感じる。グリプス戦役あたりから使っているのだろうか。新しい作業スーツを発注することもままならないのか、連邦軍の台所事情が厳しいことを物語っていた。
「ここにあるジム2か、配属先の戦闘艦に積んであるのを使えってことか…。」
 さすがのフェリー少尉も腕組みして唸る。
「我々が所属することになるカタニアは、まだ帰港しないのでしょうか?」
 オーバニー軍曹がデッキ管理担当に問いかける。
「詳しくは知らないが…月の裏側に行っているって話しだよ。少尉殿、申し訳ありませんが、訓練用ならば向こうのジム改を使用していただけますでしょうか。」
 デッキ管理担当の苛立ちが隠しきれずに会話に滲み出てくる。フェリー少尉はカタニアが帰ってくるまで、オーバニー軍曹の宙間訓練をと考えていたが、デッキの隅で埃を被っていたジム改を見やって、何だか悲しくなってきた。
「まだ動くのか?」
「当然です。デラーズ紛争直後にロールアウトしたものですが、中身はジム2のマイナーチェンジ版と同じくらいチューンしています。」
 整備クルーが胸をはって答えた。所詮ジム2とて、ハイザックにも劣るスペックなのにな・・・。整備クルーの表情とは裏腹に、フェリー少尉はひと息吐いて、デッキの向こうを指差す。
「わかった。カタニアが戻ってくるまで、アレを使用させてほしい。」
「こちらこそ、こいつらが日の目を見るなんて…、整備屋冥利に尽きます。」
 三十分後、ルナツーのMS用ゲートから発進した二機のジム改は、遠くに地球を臨みながら、漆黒の中を漂っていた。元々フェリー軍曹は一年戦争時、チェンバロ作戦に向け促成養成されたMSパイロットだったから、宇宙空間でのMS操縦は何の問題もなかった。まあ九年ぶりの感を取り戻す意味合いはあるが…。地球から出たことがなかったオーバニー軍曹は、単独でのMS宇宙遊泳は初めてであるが、マサワでネモやΖプラスを動かしていたこともあり、フェリー少尉が心配していたほどの混乱はなかった。
 一年戦争時のジムはオペレーションモードのパターン蓄積が不十分で、空間挙動に関しては自身で覚えさせなければならないことが多かったが、一年戦争後のジム改では、教育型コンピュータに蓄積された膨大な動作パターンから、最適なものを即座に読み出して、パイロットの操作に追従することが出来た。第二世代以降の教育型コンピュータは更に高性能化しており、作戦情報を設定するだけで、モーションパラメータを自動選択し、MSが発進する前に所定設定は完了させている。また、いずれかの通信環境が確保される戦闘域においては、各機の情報から戦闘単位での設定も可能となっていた。これらの技術はシュミレーション技術に応用され、MS開発の高効率化に貢献していた。
「向こうがグリーンノア1…、と、旧ゼダンの門…。そういえば…、グリプス2はどこに行ったんだろうか…。」
 細かな岩塊を避けながら飛行するオーバニー軍曹のジム改を、モニタの端に捉えたフェリー少尉は、慣熟訓練も順調に行きそうでホッとしていた。
「あとは・・・、カタニアが帰港するのを待つだけか。」
 そのカタニアが、地球を挟んで遥か向こうの暗礁宙域でネオ・ジオンと戦闘状態に入ったことは、フェリー少尉達には知る由もなかった。

リジュ・ルージュってのはね。その3、というか、これで完了? [HCM-Pro]

昨日、どどんと塗装。二日連続でベランダでブラシ吹いてたもので、手足すっかり日焼けしてやんの(笑)
1/144スケールなら、もっといろいろやりようがあった気がするが(塗装も白だけでなく、白銀とか、ライトグレーとかで塗り分けるとか)今回、根性なさ過ぎた。
で、こんな感じ。
DVC00295.JPG
今思えば、パールホワイトかければよかったか。ビーム・ライフルはジャンクを使って、ちょっとデコってますが、基本はゲルググ純正品。シールドはキャラクター設定上、きっと持たないので作ってません。
アクティブ・バインダは関節仕込んであるので、回るし、更にもうひとつサブアーム(っていうかビーム砲)が仕込んである設定。イリアのリゲルグとは、ちょいと異なるのね。
DVC00296.JPG
こちら背面。B型もどきのバックパックにノズル追加とプロペラントタンクを装備。ザクのお尻の装甲を貼って、アクセントにしています。
う~ん、せっかく足首はゲルググのでぶっちーのじゃなくて、スマートなヒールにしたのに、全然見えませんね(笑)
DVC00297.JPG
顔、若干アップ。ゲルググのブタッ鼻は品がないので、削り込んで鳥のような感じの精悍なマスクに。
今回、塗装は白色、アクセントに赤のラインと決めていたので、ものすごくシンプルなのですが、その白と赤は結構悩みました(白、赤でもいろいろあるからね~)
結果的にライトグレーに近い白と、明るめの赤を用いました(いつもじゃ、絶対に使わない赤だなあ~)
reju_rouge.jpg
これはゲルググの画像にCGで彩色したイメージ写真。色設定の参考で作成してたもの。
メタリックとかパールを使いたかった・・・。
どうせやるなら、MGでリトライしてみたいなあ~。多分やることはないかもしれないけど(苦笑)

リジュ・ルージュってのはね。その2 [HCM-Pro]

前回作っていた各パーツを組んでみました。
DVC00292.JPG
こんな感じになります。肩のでかいゲルググか、リゲルグもどきといった感じでしょうか。
これ見よがしに乗っかっている肩の装甲には当然ギミックがあります。それは、おいおい。
こいつも、ある意味、塗装が難しい・・・。ちゃんと希望の色がのるかどうか・・・。
慎重にいきましょう。

HCM-Pro 試作バーザムを作成してるのね ~完成編 [HCM-Pro]

久々に休みと天候がマッチしたもので、試作バーザムを塗装してみました。
DVC00289.JPG
こんな感じ。なかなかティターンズカラーってのは塗りづらいもので。紺と黄色のコントラストはいいんだけどね。
Mk2からバーザムに至る過程がこれです的な設定。
写真ではよくわからないのですが、アイボール・センサーはピンクでなくて、クリアグリーンにしています。
マニュピレータがMk2のままなので、ビーム・ライフルはMk2のものをそのまま使用する設定です。
DVC00290.JPG
背面です。バックパックやお尻の装甲は、バーザムの印象に寄っていってます。
シールドはMk2のものを流用できますが、対ビーム・コーティングされた手甲を試験的につけている設定。
バーザムのハイヒールに似せる為に、Mk2の足裏に上げ底しています。
Mk2の設計基を使って、量産型の試作モデルを作ったらこんな感じだったけど、まだまだコスト高いなあ~みたいな。(結局、バーザムそのものもコスト抑制にはならなかったのですが)
1/200scaleは、一気に塗装できるのはいいのですが・・・、細かい塗り分けに関しては、かなりきついなあ~。今回はマスキングテープ貼るのが辛くて・・・、エアブラシのノズルめいいっぱい絞って、当て紙しながら塗装したんだな。何て面倒くさがりなヤツ(苦笑)
ネルソン少佐の勇姿、そのうち本編にUpしておきます。

リジュ・ルージュってのはね。 [HCM-Pro]

試作バーザムの塗装待ちの間、次のMSを作成中なのですが・・・。
そのオリジナルMSのリジュ・ルージュってのが、下の写真です。
DVC00285.JPG
お分かりですかね。ベースはMS-14 カスペンゲルググです。
改装する部分は、写真の箇所と、バックパックかな。ビーム・ライフルも少し変える予定ですが。
MS-14J リゲルグに似たようなものですが・・・、肩にはアクティブ・バインダを装備させる予定。MS-14Re リジュ・ルージュといいます。
A Piece of U,C,00XXでは、新キャラがこれに搭乗します。
第一次ネオ・ジオン戦争~第二次ネオ・ジオン戦争の間は、エピソードの自由度が高いので、外伝を用意中。
本筋にどう絡めるかは検討中なのね。
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